Verification Lab ― Report 01

BNF流・乖離率逆張りは、
日本株で通用するのか

「下げすぎた株を買い、戻りを取る」。伝説の個人投資家BNF氏の代名詞である逆張りを、21年分の日本株データで検証しました。結論は「通用する。ただし条件つきで」です。

21年
検証期間 2005〜2026
4実験
地合い・時代・サイズ・暴落
128銘柄
流動性で選抜した対象
PF 1.41
基準ルールの成績
ホーム/検証ラボ 地合い/BNF流・乖離率逆張り
Contents
  1. 検証したルールと前提
  2. 実験1 ― 地合いで絞ると何が変わるか
  3. 実験2 ― 「どこまで下げたら買うか」は時代で動く
  4. 実験3 ― BNFはなぜ大型株で逆張りをやめたのか
  5. 実験4 ― 暴落のとき、逆張りはどうなるか
  6. 結論 ― 4つの答え
  7. 検証の前提と限界

検証したルールと前提

検証したのは、もっとも素朴な形の乖離率逆張りです。「移動平均線からの乖離率が、しきい値まで下げた銘柄を買う。一定日数後に手仕舞う」。裁量は一切入れず、この機械的なルールを21年分のデータに当てはめました。

項目
条件
対象
流動性で選抜した日本株128銘柄(大型〜中小型を含む)
期間
2005年〜2026年(約21年)
買いの条件
移動平均線からの乖離率がしきい値(−8%〜−24%で比較)に到達
手仕舞い
基準は10営業日後(実験4で保有1〜10日を比較)
売買コスト
往復0.2%固定の簡易モデル

基準ルール(フィルターなし)の成績は、取引数2,679件・勝率44.0%・PF 1.41・年率11.2%・最大ドローダウン−45.7%でした。PFは1を超えており「エッジ(優位性)はある」。しかし最大ドローダウン−45.7%は、資産が半分近くまで減る局面があったということです。ここからが検証の本番です。

実験1 ― 地合いで絞ると何が変わるか

「相場全体が良いときだけ逆張りする」と成績はどうなるのか。日経平均の移動平均線とVIX(恐怖指数)で新規買いを絞ってみました。

フィルター取引数勝率PF年率最大DD
フィルターなし(基準)2,67944.0%1.4111.2%−45.7%
日経>25日線のみ33841.7%1.291.0%−8.0%
日経<25日線のみ2,41144.0%1.4110.1%−45.7%
日経>75日線のみ39747.1%1.582.2%−8.4%
日経<75日線のみ2,32243.6%1.399.3%−45.7%
VIX<25のみ1,38343.7%1.385.4%−29.8%
VIX≧25のみ1,38743.0%1.355.1%−39.9%

年率は簡易モデルによる参考値。参考:同期間の日経平均の買い持ち(Buy&Hold)は+525.8%。

Answer 01

地合いフィルターが変えるのは、利益よりも「苦しさ」でした。日経平均が75日線より上のときだけ買うと、PFは1.41→1.58に改善し、最大ドローダウンは−45.7%→−8.4%へ劇的に浅くなります。引き換えに取引数は約7分の1に減り、年率も下がる。「たくさん取るが、深く沈む」か「機会は減るが、浅い傷で済む」か ― フィルターとはこのトレードオフを選ぶ行為です。

実験2 ― 「どこまで下げたら買うか」は時代で動く

乖離率のしきい値を−8%から−24%まで動かし、さらに期間を3つの時代に分けて成績を見ました。まず、直近の時代(2018〜2026年)のPFです。

しきい値を深くするほど、優位性は濃くなる(2018〜2026) PF 1.5(優秀の目安) PF 1.0(損益トントン) 1.19 1.16 1.31 1.38 1.64 1.76 1.76 1.60 1.63 −8% −10% −12% −14% −16% −18% −20% −22% −24% 乖離率のしきい値(どこまで下げたら買うか)
2018〜2026年・しきい値別のプロフィットファクター。−18%〜−20%まで「待つ」と、PFは1.76まで上がる。

そして、時代ごとに「もっとも成績の良かったしきい値」を並べると、はっきりした移動が見えます。

時代最適しきい値PF取引数勝率
2005〜2010−24%1.5333245.2%
2011〜2017−20%1.5921747.0%
2018〜2026−18%1.7647149.0%

取引数30件以上のしきい値のうちPF最大のもの。セクター別の最適しきい値(業種で大きく異なります)は配布CSVに全数収録。

Answer 02

どの時代でも共通するのは「深く待つほど、1回あたりの優位性は濃くなる」こと。浅い下げ(−8%)で飛びつくとPF1.03〜1.19の「ほぼトントン」ですが、−18%以下まで待つとPFは1.5〜1.76に達します。一方で、最適なしきい値そのものは−24% → −20% → −18%と時代とともに移動しており、「一度決めたパラメータが永遠に最適」ではないことも、データははっきり示しました。

実験3 ― BNFはなぜ大型株で逆張りをやめたのか

BNF氏は後年、大型株での逆張りを縮小したと言われます。「大型株では優位性(エッジ)が消えた」のか、それとも「そもそもチャンスが来なくなった」のか。銘柄を売買代金でグループ分けして切り分けました。

グループ銘柄数シグナル頻度(回/銘柄・年)取引数勝率PF
大型(売買代金上位25%)322.3987244.7%1.49
中間(中位50%)642.551,57444.9%1.46
中小型(下位25%)323.781,37445.1%1.49
Answer 03

意外なことに、起きてしまえば成績はほぼ同じ(PF 1.46〜1.49、勝率もほぼ横並び)でした。違うのは頻度です。深い乖離は、大型株では年2.39回しか起きないのに、中小型では3.78回起きる。つまり大型株で消えたのは「エッジ」ではなく「機会」。資金が大きくなるほど中小型では建てられなくなり、機会の少ない大型に縛られる ― BNF氏の転換は、データと整合的でした。

実験4 ― 暴落のとき、逆張りはどうなるか

逆張りが一番怖いのは暴落です。「落ちるナイフ」を掴んだとき何が起きたのか、3つの暴落局面で保有日数別に検証しました。まず、翌日に手仕舞う「保有1日」のPFを比べます。

同じ「暴落」でも、逆張りの効き方はまるで違う(保有1日) PF 1.0(損益トントン) 1.48 1.07 0.97 2.33 全期間 リーマン 2008-09 コロナ 2020 2024年8月急落 プロフィットファクター(棒が下の基準線を下回る=損失)
暴落局面別のPF(保有1日)。リーマン・コロナでは優位性がほぼ消え、2024年8月型の急落では最も強く機能した。
局面保有取引数勝率PF平均損益
全期間1日4,67551.7%1.48+0.70%
全期間10日2,67944.0%1.41+0.94%
リーマン(2008/9〜2009/3)1日88842.9%1.07+0.14%
リーマン(2008/9〜2009/3)10日47531.2%0.83−0.49%
コロナ(2020/2〜2020/5)1日23839.9%0.97−0.07%
コロナ(2020/2〜2020/5)10日17434.5%0.98−0.06%
2024年8月急落(2024/7〜9)1日14361.5%2.33+1.54%
2024年8月急落(2024/7〜9)10日8155.6%2.30+2.43%

保有2・3・5日を含む全データは配布CSVに収録。

Answer 04

「暴落」とひとくくりにはできませんでした。経済そのものが壊れていくリーマン型の下落では、逆張りは長く持つほど損失(保有10日でPF0.83)。一方、需給ショックで急落して急回復した2024年8月型では、逆張りが最も輝きました(PF2.3超・勝率6割超)。また全期間で見ると、勝率が最も高いのは「保有1日」=逆張りの優位性は最初の1日に最も濃く、長く持つほど薄まることも分かります。

結論 ― 4つの答え

この検証の全過程 ― ルールの組み立てから、うまくいかなかった試行、セクター別・連れ高戦略の検証まで ― は、書籍『BNF流 短期逆張り投資の全検証』にまとめています。

検証の前提と限界

Limitations ― 必ずお読みください

①対象は選抜済みの128銘柄ユニバースであり、市場全体ではありません。②上場廃止銘柄を含まないため、サバイバーシップバイアス(生き残った銘柄だけを見る偏り)があります。③2005年頃の古いデータは品質が落ちる場合があります。④売買コストは往復0.2%固定の簡易モデルで、滑り・流動性は簡略化しています。⑤すべて過去データの観察であり、将来の成果を保証しません。

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あわせて読むBNFの逆張りを解説で学ぶ(無料記事)
Book

検証の全記録は、一冊にまとめました

『BNF流 短期逆張り投資の全検証』 ― この4実験を含む検証の全過程を、順を追って読める形にした一冊です。

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本ページは、運営者自身が行った過去データ検証(バックテスト)の結果を研究記録として共有するものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するもの、または投資判断について助言するものではありません。検証には上記「検証の前提と限界」に記載の偏りが含まれます。将来の成果を保証するものではありません。投資はご自身の判断と責任において行ってください。 免責事項の詳細