したがって、成績が下がったとしても、それは「この構成に、この条件を重ねた場合」の観測にすぎません。 利確という考え方そのものの良し悪しを判定したものではありません。 結論を出すための検証ではなく、挙動を観測するための研究として読んでください。
何を、どう変えたのか
土台は、実際に運用しているシステムそのものです。BNF-LITE(逆張り)・MOMENTUM(順張り)・Minervini-LITE(成長株)の3戦略を併用しています。
そこに変えたのは、利益確定の条件だけ。含み益が15%に達したら手仕舞う版と、20%で手仕舞う版を用意し、条件を何も足さない状態(以下「基準」)と比べました。
- 検証期間
- 2015-12-09 〜 2026-08-13(約10.7年)
- 対象
- 日本株 341銘柄
- 資金
- 初期資金 100万円・単利(増えた資金は再投資しない)
- リスク
- 1トレードあたり 1.0%
- 同時保有
- 最大 10銘柄
- 変えたもの
- 利確の条件のみ(15% / 20%)
- 含まないもの
- 売買手数料・税金・スリッページ
結果 ― 3つの数字が同じ方向に動いた
| 実験 | 件数 | 勝率 | PF | 最大DD | 総リターン | 年率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基準(利確なし) | 1,124 | 48.8% | 2.05 | −14.3% | +509.9% | +20.2% |
| 15%で利確 | 951 | 46.9% | 2.02 | −17.6% | +450.6% | +19.0% |
| 20%で利確 | 926 | 46.3% | 1.98 | −10.0% | +426.3% | +18.4% |
利確の条件を足すと、トレード数・勝率・総リターンの3つが、いずれも下がりました。15%利確で総リターンは +509.9% → +450.6%、20%では +426.3%。勝率も 48.8% から 46.9% / 46.3% へ下がっています。
トレード数が減るのは当然です。利確で早く手仕舞えば、その分だけ次の取引に移るからではなく、1回の取引が短く終わるためです。ただし、勝率まで下がったのは、事前には読めませんでした。
意外だったこと ― 落ち込みが深くなった
この研究でいちばん予想と違ったのが、ここです。
15%利確では、最大ドローダウンが −14.3% から −17.6% へと深くなりました。利益確定はリスクを下げる行為だと受け取られがちですが、この実験ではそうなっていません。
「早めに利確しておけば、下落に巻き込まれずに済む」——直感的にはそう思えます。しかし数字はその逆を示しました。利確を入れたほうが、資産のピークからの落ち込みが大きかったのです。
なお20%利確では −10.0% と浅くなっており、利確幅によって向きが変わっています。「利確すればDDが浅くなる」とも「深くなる」とも、この2例からは言えません。
読み方の候補
確かなのは、「利確を決めれば安全になる」という前提が、この構成では成り立たなかったという事実だけです。
この研究の限界
- 単一の構成での観測です。3戦略を統合したシステムの上に条件を重ねた結果であり、利確を単独のルールとして運用した場合については何も測っていません。
- 単一の期間です。2015年12月〜2026年8月。この期間の相場つきに依存した結果である可能性があります。
- 過去のデータです。同じ条件で将来も同じ数字になるとは限りません。
- 売買手数料・税金・スリッページを含みません。実際の手取りは、その分だけ少なくなります。
- 利確幅は2通りだけです。10%や30%では違う結果になる可能性があります。