移動平均線は、一定期間の終値の平均を毎日つないだ線。価格のブレをならし、相場の方向性を一本の線で見えるようにしてくれます。
日本株10年の検証結果
入門書1ページ目の終焉
(1回の売買あたり)
TOPIX500の490銘柄を対象に、2016年1月〜2025年12月の10年分で、教科書どおりのシグナルが出た翌営業日に買い、20営業日後に売った場合の成績です。同じルールでランダムなタイミングに買った場合と比べて、1回の売買あたり+0.77%の差がありました。勝率は売買の何割で利益が出たかを示す数字で、判定には使っていません。
10年を通すと、ランダムに買った場合を上回っています。それでも判定が「×捨てろ」なのは、10年の平均だけで判定していないからです。相場が上げているとき・下げているとき、期間の前半・後半の4つに分け、売り方2通り(出口A・出口B)のそれぞれで、ランダムに買った場合との差が実質ライン(+0.3%)を超えているかを確かめています。実質ラインは、わずかなプラスを誤差と見なさないための線で、これを超えて初めて「効いている」とみなします。◎の指標は、8つの区分すべてでこの線を超えました。25日移動平均線のクロスの判定の根拠になった区分は次のとおりです。
| 区分 | 売り方 | ランダムとの差 | 実質ライン |
|---|---|---|---|
| 後半(2021年〜2025年) | 出口A(20営業日後に売る) | +0.04% | 届かず |
| 後半(2021年〜2025年) | 出口B(8%トレーリング) | −0.15% | 届かず |
| 前半(2016年〜2020年) | 出口A(20営業日後に売る) | +1.22% | 超えた |
8つの区分すべての成績は、本に収めています(検証のしかた)。
検証したのは、株価が25日移動平均線を下から上に抜けた日に買う使い方です。短期線と長期線の2本が交わるゴールデンクロスは、この検証には含まれていません。
検証の条件
| 期間 | 2016年1月〜2025年12月(10年間) |
|---|---|
| 対象 | TOPIX500構成銘柄(490銘柄が有効) |
| 売買ルール | 買い:SMA25クロスの教科書どおりのシグナル(下の「検証したルール」)が出た翌営業日の寄付で成行買い 売り:買ってから20営業日後に売る(出口A)。このページの数字は、この売り方の成績 パラメータ:すべて教科書のデフォルト値。最適化は一切なし |
| 手数料・スリッページ | 往復0.3%(手数料+すべり)を毎回差し引き |
| 比べた相手 | デタラメ売買(ランダムエントリー)約1万4千回 |
どんな指標か
株価が25日移動平均線を上抜けたら買う、基本中の基本
結論
このクロスで買っても、もうデタラメと変わらない
検証したルール(教科書の使い方)
「終値が25日移動平均線を下から上に抜けたら買い」。教科書の1ページ目に載っている、あのルールです。
書籍『最新日本株10年で全検証 本当に使えるテクニカル指標』より
移動平均線とは
移動平均線(いどうへいきんせん)とは、一定期間の終値の平均値を毎日計算し、その点をつないでいった線のことです。英語では Moving Average、略して「MA」と呼ばれます。最も基本的なものは、単純に平均をとる単純移動平均(SMA)です。
たとえば「5日移動平均線」なら、その日を含む直近5日間の終値を足して5で割った値を、毎日プロットしていきます。日が進むごとに計算対象が一日ずつずれていくため、「移動」平均と呼ばれます。
1本1本の終値は上下に細かく動きますが、平均をとることでそのノイズ(細かいブレ)がならされ、相場が今どちらを向いているのかというトレンドが見やすくなります。これが移動平均線を使う最大の理由です。
短期・中期・長期の使い分け
移動平均線は、平均をとる期間(日数)によって性格が変わります。期間が短いほど価格に敏感に反応し、長いほどゆったりと大きな流れを示します。日本株でよく使われる設定は次のとおりです。
短期線は反応が速いぶん細かく動き、長期線はゆっくり動くぶん大きな方向性を表します。多くのチャートでは、短期・中期・長期を組み合わせて表示し、目先と大局の両方を同時に確認します。なお、何日に設定するかに絶対の正解はなく、上に挙げた数値は広く使われている目安です。
線の向き(傾き)が最も大切
移動平均線を読むとき、まず見るべきはクロスでも価格との位置でもなく、線そのものの向き(傾き)です。
- 線が上向き:平均値が切り上がっている=上昇基調にある状態。
- 線が下向き:平均値が切り下がっている=下落基調にある状態。
- 線が横ばい:方向感が乏しく、もみ合っている状態。
後述するゴールデンクロスなどの「サイン」に目が行きがちですが、その前に、いま線が上を向いているのか下を向いているのかを確認するだけで、相場の大まかな状態をつかめます。シンプルですが、最も基本となる見方です。
価格と移動平均線の位置関係
次に見るのが、現在の価格が線の上にあるか下にあるかです。一般に、価格が移動平均線より上にあるときは買い方が優勢、下にあるときは売り方が優勢と解釈されます。
移動平均線は「その期間に買った人の平均的な買値」に近い意味を持つため、線は支持(下支え)や抵抗(上値の重し)として意識されやすい水準になります。
- 押し目:上昇基調の中で、価格が一時的に移動平均線まで下がってくる場面。
- 戻り:下落基調の中で、価格が一時的に移動平均線まで上がってくる場面。
線の向きと価格の位置関係を合わせて見ることで、「上向きの線に向かって価格が下げてきた(押し目)」のように、相場の局面を立体的に読めるようになります。
ゴールデンクロスとデッドクロス
期間の異なる2本の移動平均線が交差する点は、トレンド転換の目安として広く知られています。
ただし、これらのクロスは万能のサインではありません。横ばい相場では何度もクロスを繰り返し、結果的に外れる「ダマシ」が頻発します。そのため教科書では、クロスを単独の売買根拠にせず、線の向きや相場全体の流れと合わせて判断することがすすめられます。
なお、冒頭の検証で「×捨てろ」になったのは、株価が25日移動平均線を上抜けるクロスです。2本の線が交わるゴールデンクロスは、この検証には含まれていません。
移動平均線は「過去の平均」を結んだ線なので、実際の値動きから反応がやや遅れます(遅行性)。教科書では、この性質を理解し、単独の売買サインとしてではなく、相場環境や出来高など他の要素と組み合わせて読むことがすすめられます。
スイングトレードでの活かし方
スイングトレードの解説では、移動平均線をトレンドの判定や押し目買いの基準として、ルールの一部に組み込む使い方がよく紹介されます。たとえば「長期線が上向きで、価格が中期線まで押した局面」のように、線の向きと位置関係を条件として明文化しておく、といった使い方です。
日本株10年の検証では、これに近い考え方のルール(グランビル第1法則:上向きの移動平均線を株価が上抜けた日に買う)は判定一覧のとおり「△条件付き」、冒頭の25日線のクロスは「×捨てろ」でした。同じ移動平均線でも、どう使うかで結果は変わります。
大切なのは、線の形を感覚で当てにいくのではなく、あらかじめ決めたルールが本当に機能するかを確かめてから使うこと。相場環境の見極め方については、攻略ガイドの相場環境の章でより詳しく解説しています。
相場環境ごとの成績と、なぜ効くのかは本で
相場が上げているとき・下げているとき、期間の前半・後半に分けた成績、売り方を2通り試した比較、その指標がなぜ機能するのか(しないのか)、実戦での使い方は、書籍『最新日本株10年で全検証 本当に使えるテクニカル指標』に26指標すべて収録しています。
この検証を引用するときは、出典:ルールトレード(https://ruletrade.jp/chart-moving-average.html)と書いてください。自由に引用できます。