Verification Lab ― Report 03

「守り」は、
儲けを増やすのか

下落を避ける仕組みを足せば、成績は良くなる——多くの人がそう考えます。それを確かめるため、まったく同じ売買ルールに「防御レイヤー」を足しただけの2つのシステムを、日本株337銘柄・約9年・計6,900トレードで正面から戦わせました。

337銘柄
対象(約9年)
6,900件
両システム合計の売買
−34.3% → −20.5%
最大ドローダウン
+9.5% → +7.5%
年率リターン
ホーム/検証ラボ/防御ありなし 同条件対決
Contents
  1. 検証した問い ― 何と何を比べたのか
  2. 結果 ― 守った側は、儲からなかった
  3. では何を守ったのか ― 4つの急落局面
  4. その代償 ― 上げ相場で置いていかれる
  5. この結果をどう使うか
  6. 正直な注意 ― この数字の限界

検証した問い ― 何と何を比べたのか

比べたのは、次の2つです。売買のシグナル(何を、いつ買うか)はまったく同じで、片方にだけ「危ないときは手を出さない・数を減らす」防御の判断を足しています。

システム
中身
素朴版
シグナルが出たら、いつでも買う。防御の判断を一切持たない
防御版
同じシグナル+①相場全体が下向きなら新規建てを止める ②下げすぎた銘柄の深追いをやめる ③保有株が一斉に下げた日は建玉を絞る

検証条件も完全に揃えています。資金100万円・現物・単利、最大20銘柄×1銘柄あたり5%、シグナル翌日の寄付で仕掛け。期間は2017年8月15日〜2026年7月9日(約9年)。違いは防御レイヤーの有無だけです。

Question

守りを固めた側は、素朴な側より儲かるのか
そして、儲からないとしたら——それでも守る意味はあるのか。

結果 ― 守った側は、儲からなかった

先に結論から書きます。防御版は、儲けでは負けました。

指標
素朴版
防御版
トレード数
3,883件
3,017件
勝率
26.3%
29.7%
プロフィットファクター
1.30
1.36
年率リターン
+9.5%
+7.5%
最大ドローダウン
−34.3%
−20.5%

年率で2.0%ポイント負けています。100万円を約9年運用した最終資産は、素朴版が224万円、防御版が191万円。33万円の差です。「守れば儲かる」は、この検証では成立しませんでした。

けれど、最後の行を見てください。最大ドローダウンが−34.3%から−20.5%へ、4割減っています。ここに、この検証のすべてがあります。

Answer

防御は、儲けを増やす装置ではありませんでした。壊れないための装置でした。
払ったのは年率2.0%ポイント。買ったのは、資産が3割超えて凹む夜を経験しなくて済むことです。

では何を守ったのか ― 4つの急落局面

防御が何をしたのかは、相場が崩れた日に現れます。この9年間で起きた4つの急落を切り出しました。数字は各局面のなかで資産が最も落ち込んだ幅です。

局面
素朴版
防御版
2018年10-12月 世界同時株安
−12.3%
−7.7%
2020年2-4月 コロナショック
−33.5%
−19.3%
2022年1-6月 金利ショック
−13.6%
−6.1%
2024年7-8月 令和のブラックマンデー
−11.7%
−8.5%

4局面すべてで、防御版のほうが浅く済んでいます。とくにコロナショックでは、素朴版が3分の1を失ったのに対し、防御版は2割弱で踏みとどまりました。年単位で見ても、2020年は素朴版−4.8%に対し防御版は+1.1%、2022年は−4.1%に対し+0.6%と、下げ相場の年だけ符号が逆転しています。

ここで大切なのは、ドローダウンは「戻す労力」だということです。34%減った資産を元に戻すには52%の利益が必要ですが、20%なら25%で足ります。そして現実には、3割減った時点で相場から降りてしまう人が大半です。防御が本当に守ったのは資産額ではなく、「続けられるかどうか」でした。

その代償 ― 上げ相場で置いていかれる

都合のいい話だけを載せるつもりはありません。防御には、はっきりした代償があります。年ごとの成績を並べます。

素朴版
防御版
2018
−9.0%
−4.7%
2019
+11.5%
+6.6%
2020
−4.8%
+1.1%
2021
+4.9%
+6.0%
2022
−4.1%
+0.6%
2023
+21.3%
+10.3%
2024
+16.9%
+4.3%
2025
+12.9%
+18.0%

※2017年・2026年は年の途中からの集計のため除いています(全データはCSVに収録)。

はっきり出ています。2023年は+21.3%に対して+10.3%、2024年は+16.9%に対して+4.3%。相場が素直に上がった年ほど、防御版は大きく置いていかれました。理由は単純で、「危ないかもしれない」と判断して見送った場面が、結果的にはただの上昇だったからです。

守りを固めるとは、上げに乗り遅れることでもある。この非対称を受け入れられるかどうかが、防御を使うかどうかの分かれ目です。

この結果をどう使うか

この検証から言えることは、3つです。

 
読み取れたこと
01
防御は「勝率とPFを少し上げ、年率を下げ、ドローダウンを大きく下げる」。取引数は3,883件から3,017件へ減り、入らなかった約900回が効果の正体です
02
効果が出るのは下げ相場の年だけ。上げ相場では確実にコストになります。9年のうち防御が勝ったのは3年です
03
したがって防御は「成績を上げる改良」ではなく「途中で退場しないための保険」。保険料は年率2.0%ポイントでした

付け加えるべき事実がひとつあります。この防御レイヤーを、当サイトが実際に運用しているスイングシステムReport 02/PF2.03)に移植して試したところ、成績はむしろ悪化しました。そちらには既に別のかたちの防御が組み込まれており、二重にかけると裏目に出たのです。

つまり——防御が効くのは、防御を持たないシステムに対してだけ。良い部品だからといって、どこに足しても良くなるわけではない。これも、やってみるまで分かりませんでした。

正直な注意 ― この数字の限界

Limitations ― 必ずお読みください

これはバックテスト(過去データ)に基づく理論値であり、将来の成果を保証しません。生存バイアスがあります(現在の上場銘柄で過去を検証しているため、途中で上場廃止になった銘柄が含まれず、成績はやや上振れします)。売買手数料・スリッページ・税金を計上していません(売買回数の多い素朴版のほうが、実際にはさらに不利になります)。単元未満の株数で計算しているため、実際の売買ではこの通りには建てられません。約9年という期間は、相場の歴史から見れば短い一区間です。

この検証で使った数字は、全売買6,900件の明細まで含めてすべて配布しています。年別リターンも、局面別のドローダウンも、資産推移の日次データも、そのままCSVに入っています。ここに書いた数字が本当かどうかは、あなたのExcelで確かめてください。

検証データ(無料)この検証のCSV一式を受け取る ― 物理データパック
関連書籍株で勝つ人は、物理で考えている ― この防御の考え方の原典
次の検証勝率48.8%でも、資産は増えるのか(Report 02)
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