検証した問い ― 何と何を比べたのか
比べたのは、次の2つです。売買のシグナル(何を、いつ買うか)はまったく同じで、片方にだけ「危ないときは手を出さない・数を減らす」防御の判断を足しています。
検証条件も完全に揃えています。資金100万円・現物・単利、最大20銘柄×1銘柄あたり5%、シグナル翌日の寄付で仕掛け。期間は2017年8月15日〜2026年7月9日(約9年)。違いは防御レイヤーの有無だけです。
守りを固めた側は、素朴な側より儲かるのか。
そして、儲からないとしたら——それでも守る意味はあるのか。
結果 ― 守った側は、儲からなかった
先に結論から書きます。防御版は、儲けでは負けました。
年率で2.0%ポイント負けています。100万円を約9年運用した最終資産は、素朴版が224万円、防御版が191万円。33万円の差です。「守れば儲かる」は、この検証では成立しませんでした。
けれど、最後の行を見てください。最大ドローダウンが−34.3%から−20.5%へ、4割減っています。ここに、この検証のすべてがあります。
防御は、儲けを増やす装置ではありませんでした。壊れないための装置でした。
払ったのは年率2.0%ポイント。買ったのは、資産が3割超えて凹む夜を経験しなくて済むことです。
では何を守ったのか ― 4つの急落局面
防御が何をしたのかは、相場が崩れた日に現れます。この9年間で起きた4つの急落を切り出しました。数字は各局面のなかで資産が最も落ち込んだ幅です。
4局面すべてで、防御版のほうが浅く済んでいます。とくにコロナショックでは、素朴版が3分の1を失ったのに対し、防御版は2割弱で踏みとどまりました。年単位で見ても、2020年は素朴版−4.8%に対し防御版は+1.1%、2022年は−4.1%に対し+0.6%と、下げ相場の年だけ符号が逆転しています。
ここで大切なのは、ドローダウンは「戻す労力」だということです。34%減った資産を元に戻すには52%の利益が必要ですが、20%なら25%で足ります。そして現実には、3割減った時点で相場から降りてしまう人が大半です。防御が本当に守ったのは資産額ではなく、「続けられるかどうか」でした。
その代償 ― 上げ相場で置いていかれる
都合のいい話だけを載せるつもりはありません。防御には、はっきりした代償があります。年ごとの成績を並べます。
※2017年・2026年は年の途中からの集計のため除いています(全データはCSVに収録)。
はっきり出ています。2023年は+21.3%に対して+10.3%、2024年は+16.9%に対して+4.3%。相場が素直に上がった年ほど、防御版は大きく置いていかれました。理由は単純で、「危ないかもしれない」と判断して見送った場面が、結果的にはただの上昇だったからです。
守りを固めるとは、上げに乗り遅れることでもある。この非対称を受け入れられるかどうかが、防御を使うかどうかの分かれ目です。
この結果をどう使うか
この検証から言えることは、3つです。
付け加えるべき事実がひとつあります。この防御レイヤーを、当サイトが実際に運用しているスイングシステム(Report 02/PF2.03)に移植して試したところ、成績はむしろ悪化しました。そちらには既に別のかたちの防御が組み込まれており、二重にかけると裏目に出たのです。
つまり——防御が効くのは、防御を持たないシステムに対してだけ。良い部品だからといって、どこに足しても良くなるわけではない。これも、やってみるまで分かりませんでした。
正直な注意 ― この数字の限界
これはバックテスト(過去データ)に基づく理論値であり、将来の成果を保証しません。生存バイアスがあります(現在の上場銘柄で過去を検証しているため、途中で上場廃止になった銘柄が含まれず、成績はやや上振れします)。売買手数料・スリッページ・税金を計上していません(売買回数の多い素朴版のほうが、実際にはさらに不利になります)。単元未満の株数で計算しているため、実際の売買ではこの通りには建てられません。約9年という期間は、相場の歴史から見れば短い一区間です。
この検証で使った数字は、全売買6,900件の明細まで含めてすべて配布しています。年別リターンも、局面別のドローダウンも、資産推移の日次データも、そのままCSVに入っています。ここに書いた数字が本当かどうかは、あなたのExcelで確かめてください。